翻訳家の卵がシャーロック・ホームズを翻訳してみた『ライゲートでの難問』その7

 治安判事は肩をすくめ、質素な家具が置かれたごくごく普通の部屋へ私たちを案内した。私たちがその部屋の窓に移動すると同時に、ホームズは私と彼が最後尾になるよう後ろに下がった。ベッドの足近くにあるテーブルには、オレンジが盛られた皿と水差しが並んでいた。私たちがそのテーブルを通り過ぎると同時に、筆舌に尽くしがたいが驚くことに、ホームズは私の前に屈み、テーブルにあるもの全てをわざとひっくり返したのだった。水差しは数えられないくらい粉々に割れ、オレンジは部屋の隅という隅に転げ回った。




「なんてことするんだ、ワトソン」ホームズは冷淡に言った。「全くひどい。絨毯が台無しじゃないか」
 頭に巡る巡る混乱を抑え、責任を私に押しつけた友が、私に望んだいくらかの理由を理解しようとしながら、私はオレンジを拾い集め始めた。他の面々も同じように拾い集め始め、テーブルの上に元に戻した。
「皆さん!」フォレスター警部は叫んだ。「あの人はどこに?」
 ホームズは姿を消していた。
「ちょっとここで待っててください」アレク氏は言った。「俺が思うにやつは正気じゃない。父さん、俺と一緒に来てくれ! やつがどこに行ったのかを確かめよう!」
 カニンガム親子は部屋の外に駆け出した。フォレスター警部、ヘイター大佐、そして私を残して。私たちは互いに唖然として見つめ合った。
「ここだけの話、私はアレク氏が言っていることも一理あると思っています」フォレスター警部は言った。「それはあの人の病気の影響のせいかもしれない。ですが、私にはあの人が――」
 フォレスター警部の言葉は「助けてくれ! 人殺しだ!」という震えをともなった突然の悲鳴によって遮られた。私はすぐにその声が友のものだと認識した。私は狂ったように部屋から廊下へと急いだ。不明瞭な叫び、枯れ声になりつつあるその叫び声は、私たちが最初に訪れた部屋から聞こえていた。私は急いで中に入り、寝室をまたいで化粧室へ駆けた。カニンガム氏とアレク氏はシャーロック・ホームズを取り押さえていた。アレク氏はホームズの喉元にしっかりと両手をまわし、一方でカニンガム氏はホームズの手首をひねっているように見えた。私たち三人がホームズからカニンガム親子を引き離した瞬間、ホームズはよろめきながら立ち上がり、まさに死んだかのように青ざめ、疲弊していた。
「その男たちを一刻も早く逮捕してくれ、フォレスター警部」息もきれぎれにホームズは言った。
「何の容疑で?」
「彼らの御者、ウイリアム・キルヴァンさん殺害の容疑でだよ」
 フォレスター警部はうろたえながらホームズを見つめた。「ええと、まあ、ホームズ殿」ついにフォレスター警部は言った。「私は確信しています。あなたは本当は何も……」
「よく見ろ! フォレスター警部、彼らの顔をよく見ろ!」ぶっきらぼうにホームズは叫んだ。
 確かに、私はこれまでに見たことがなかった。誰が見ても明らかな、これはどまでに人間の顔に張りついた罪の告白を。老人は、顔にどんよりとした表情を強く浮かび上がらせ、呆然とし、ぴくりとも動かない。これに反し息子は、彼の特徴でもある陽気で威勢のいい姿は消え失せていた。どう猛で危険な野獣性が彼の暗い瞳にゆらりと表れ、彼の顔を歪ませていた。フォレスター警部は何も言わず、ドアに向かって足を踏み出し、そして口笛を吹いた。部下のニ人がフォレスター警部の合図に駆けつけた。



「カニンガム殿、私には選択肢がありません」フォレスター警部は言った。「私のこの行動が、この馬鹿げた誤解を解くことになるかもしれないことを信じています。あなたならわかっていただけると――おい、お前! それを捨てろ!」フォレスター警部はすばやく足を踏み出しそれを叩くと、まさにアレク氏によって撃鉄が起こされようとしていたその銃は、がちゃがちゃと音を立てて床の上を滑っていった。
「これを保管して」そっと、ホームズは銃の上に足をのせながら言った。「フォレスター警部、君ならそれが裁判で有益に働くものだとわかるだろう。だけど、これが僕たちが本当に求めていたものだよ」くしゃくしゃになった小さな紙切れをホームズは持ち上げた。
「あの手紙の残りの部分ですか!」フォレスター警部は叫んだ。
「その通り」
「それをどこで?」
「僕はこの手紙がそこにあるに違いないと確信していたよ。この事件の全容を君たちに明らかにしようじゃないか。大佐、あなたとワトソンは戻っていいと僕は考えています。そして長くても1時間後には、僕はあなたと一緒にいるでしょう。フォレスター警部と僕は容疑者と話をする必要があります。ですが、あなたはきっと、昼時には戻ってきた僕と一緒にいることでしょう」
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