翻訳家の卵がシャーロック・ホームズを翻訳してみた『ライゲートでの難問』その6

「まず、」ホームズは言った。「カニンガムさん、あなたに報酬を用意していただきたい。というのは、警察だと、その金額に合意するのに少し時間がかかるかもしれませんし、更にこういうことは即座に決定されたためしがありません。報酬に関することはこの用紙に書き留めてきました。もしカニンガムさんがこの用紙に署名していただけるなら……。僕は50ポンドで十分なくらいだと考えています」
「喜んで500ポンド支払おう」治安判事は、ホームズからその用紙と鉛筆を受け取りながら言った。「だが、この用紙に書かれた内容は正しくないな」その文書にざっと目を通し、カニンガム氏はつけ加えた。
「急いでそれを書いたもので」




「ふむ、君はこう始めている。『火曜の深夜12時45分ごろに襲撃が行われたという事実からして』と。実際には事件は11時45分に起こっているぞ」
 私はホームズのその間違いを気の毒に思った。というのは、ホームズがそういった類の失敗をどれほど痛烈に感じるかを私はよく知っていた。それは、事実に基づいた間違いのないホームズの特徴だった。だが、ホームズの最近の病気は彼自身を動揺させており、この小さな出来事から、ホームズが普段の彼自身からまだまだ遠いということを私に示すのに十分だった。ホームズは言うまでもなく、このことに当惑していた。一方で、フォレスター警部は眉を上げ、アレク氏は堪えきれず吹き出していた。しかしながら、老紳士は用紙に書かれた間違いを訂正し、それをただホームズに手渡した。
「できる限り、すぐにそれを印刷させよう」カニンガム氏は言った。「ホームズ殿の案は素晴らしいものだと私は思っているよ」
 ホームズはその用紙を慎重に手帳の中にしまった。「さて」ホームズは言った。「屋敷内をくまなく一緒に調べることは、僕たちに利益を運ぶことになるでしょう。このかなり気まぐれな強盗が、やはり何も持ち去らなかったということを確かめるとしましょう」
 屋敷に入る前、ホームズはこじ開けられたドアの調査を行った。のみ、もしくは頑丈なナイフが押し込まれ、錠が無理やり回されていたことは明白だった。私たちは、木製のドアにそれが押しつけられた痕跡を確認することができた。
「カニンガムさん、あなたはカンヌキを使用していないのですか?」ホームズは言った。
「私たちはその必要性を見つけられなかったのでね」
「あなたは番犬を飼っていない?」
「いいや、飼っているよ。だがこの屋敷の別の場所に彼は繋がれている」
「使用人たちはいつ就寝しましたか?」
「おそらく10時ごろだな」
「ウイリアムさんもまた、普通はそのくらいに寝ていると考えていいですか?」
「構わないな」
「なるほど、それでは昨晩にだけウイリアムさんが起きていたことは奇妙ですね。さて、カニンガムさん、もし屋敷内を案内していただけるなら、喜ばしい限りです」
 ドアから奥に入ると、キッチンは枝分かれしており、板石で舗装された通路から、木製の階段によって直接屋敷のニ階に通じていた。玄関広間を過ぎると、よりきらびやかな別の階段に続く、全く異なる種類の廊下に出た。この廊下の先には、客間、カニンガム氏とその息子の部屋、使用人室を含む部屋が広がっていた。ホームズは鋭く屋敷の構造に注意を払いながらゆっくりと歩いていた。私は何かとてつもない気配を彼の表情から判断することはできた。だが私は未だ、彼のその推理の先にあるものが、彼をいったいどこに導いているのか全く想像もつかなかった。
「ホームズ殿」カニンガム氏は言った、いくらかの苛立ちをともなって。「これは全く必要のないことだと思わんかね。この廊下の端にあるのは私の部屋だ。そして、その向こうは私の息子の部屋があるだけだ。強盗が私たちに気づかれることなくここにたどり着くことが可能だったかどうか、私は君に判断してもらっているだけなんだよ」
「もうあんたはこれ以上何もせず、新鮮な空気でも吸いに行くべきですよ。ああ、俺はそう思うね」アレク氏は悪意のこもった笑みを浮かべて言った。



「まだ、僕は僕自身を納得させるために、更にあなたたちに聞かなければならないことがあるんです。例えばそうですね、寝室の窓からどれくらい遠く前方を見渡せるかを見てみたいですね。この部屋は、アレクさんの部屋だと僕は理解しています」ホームズはさっとその部屋のドアを押し開けた。「そしてこの部屋は、外で犯人たちとのやり取りがあった時、アレクさんがたばこを吸いながら座っていた化粧室だと推察しています。その様子を確認することができた窓はどれです?」ホームズはアレク氏の寝室を端まで歩き、ドアを押し開け、隣にある化粧室全体を一瞥した。
「ホームズ殿、君はさぞかし満足しているだろうね」辛辣な態度でカニンガム氏は言った。
「ご協力ありがとうございます。見たいもの全てを見れたと思います」
「ふむ、もし本当に君が必要なら私の部屋に行くこともできるが」
「面倒でなければ」
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