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翻訳家の卵がシャーロック・ホームズを翻訳してみた『ライゲートでの難問』その4

フォレスター警部が一人で戻ってくる前に、一時間半はゆうに経過していた。
「ホームズ殿は外でその場を行ったり来たりしています」フォレスター警部は言った。「ホームズ殿は私たち四人全員で屋敷に行きたいと言っています」
「カニンガム邸にかい?」
「そうです、ワトソン殿」
「なんのために?」
フォレスター警部は肩をすくめた。「私には全く検討もつきません、ワトソン殿。ここだけの話、ホームズ殿は病気からまだ全く回復していないのではと思っています。あの人は非常におかしな行動をし続けています。そして心なしか興奮しています」

「不安になる必要はない。私はそう思うよ」私は言った。「彼の狂気には秩序がある、と私は常々思っているよ」
「何人かはこう言うかもしれないですね。彼の秩序の中に狂気があると」フォレスター警部はつぶやいた。「しかし、ホームズ殿は嫌に熱心になっています、大佐殿。なので、準備がお済みでしたら、私たちは外にでたほうがよさそうです」
私たちは、その場で行ったり来たりするホームズを見つけた。あごを胸に埋め、手をズボンのポケットに突っ込んでいた。
「事件は興味深くなる一方だ」ホームズは言った。「ワトソン、君のこの田舎町への旅行はまぎれもなく成功を収めている。僕は魅力的な朝を送っているよ」
「ホームズ君、君は殺害現場に行ってきた。そう私は理解しているよ」
「ええ、フォレスター警部と私はちょっとした調査を行ってきました」
「何か成果はあったのかい?」
「ええ、僕たちはいくつかの非常に興味深いものを見てきました。歩きながら、僕たちがしてきたことをあなたにお伝えしましょう。まず第一に、僕たちはこの不運な男ウイリアムさんの死体を見てきました。報告されていたとおり、ウイリアムさんは確かに銃傷によって亡くなっていました」
「なんとホームズ殿、あなたは私が言ったことを疑っていたのですか?」
「そりゃまあ、全てを疑って調べたほうがいいからね。僕たちの捜査は無駄ではなかったよ。それで、僕たちはカニンガムさんとその息子アレクさんに聞き込みを行いました。二人からは、殺人犯が庭の生垣を飛んで強引に通り抜けた、正確な場所を教えてもらいました。いやいや、本当にそれは非常に興味深いものでしたよ」
「なるほど」
「それで、僕たちはこの不運なウイリアムさんのお母さんに注意を払いながら会ってきました。ですが、ウイリアムさんのお母さんはとても年老いていて衰弱しているため、僕たちは情報を得られませんでした」
「それで、君の取り調べの成果はなんなんだい?」
「この事件が非常に奇妙なものだという確信、ですかね。カニンガム邸への僕たちの訪問は、不鮮明な部分をより少なくするきっかけを与えるかもしれません。被害者の手にあった紙の切れ端は、ウイリアムさんの死の時刻とぴったりと一致しているので、極めて重要なものだと、僕とフォレスター警部は同じ意見だと思っています」
「それは事件の手がかりになるだろうね、ホームズ君」
「ええ、まさに手がかりになります。あの手紙を書いたのが誰であれ、その人物は、その時間にウイリアム・キルヴァンさんを外に誘い出した人物です。だけど、手紙の残りはどこにあるのかな?」

「私はその手紙の残りを見つけ出そうとし、現場を慎重に調べました」フォレスター警部は言った。
「手紙は被害者の手から破られた。なぜその人物は、そんなにその手紙を奪うことに固執したのか? なぜならそれがその人物の有罪を証明するからだ。そしてその人物は、その手紙をどうしたのか? 残りの紙を彼のポケットに突っ込んだ。ほぼ確実に、手紙の切れ端が死体の手の中に残されていたということにその人物は気づいていない。もし僕たちが手紙の残りを手に入れることができたなら、その謎を解決することに向けての長い道のりがなくなるだろうことは明らかだ」
「その通りです。ですが、私たちがその犯人を捕まえる前に、どう私たちは犯人のポケットに達することができるというのでしょうか?」
「うんうん、そのことに関しては考えを巡らせる価値があったよ。更に、判明した異なる点もあるよ。手紙はウイリアムさんに送られた。それを書いた男はそのメモを直接渡すことができなかったんだ。もしそうでなければ、もちろん、その男は口頭で彼自身のメッセージを伝えていたかもしれない。それでは、いったい誰がその手紙を届けたのか? もしくはそれは郵便でウイリアムさんの手元に届いたのか?」
「私は問い合わせを行いました」フォレスター警部は言った。「ウイリアムさんは昨日、午後の郵便で一通の手紙を受け取っていました。その封筒はウイリアムさんによって破棄されていました」
「すばらしいね!」フォレスター警部の背中を叩きながらホームズは叫んだ。「君は郵便配達員に会ってきたんだね。君と働けていることを光栄に感じるよ。さてと、ここが被害者宅です。そして大佐、あなたがカニンガム邸に向かうなら、あなたに事件の現場をお見せしましょう」
私たちは殺害された男が住んでいたこじんまりとした家を通り過ぎ、カシの木が並ぶ道を登り歩いた。ホームズとフォレスター警部は、扉のまぐさにマルプラケの終戦日が掲げられた立派な古いアン女王朝式の屋敷の通用門に至るまで、私たちを案内した。通用門は、道に並ぶ生垣から広がる庭によって仕切られており、勝手口には警察官が立っていた。
「巡査君、その扉を開けたまえ」ホームズは言った。「さて、ちょうど僕たちが立っているのが、アレクさんが二人の取っ組み合いを目撃した階段です。カニンガムさんはその窓にいました。そうそう、その左から二番目の窓です。そして、カニンガムさんはちょうどその茂みの左に逃げ出していく殺人犯を目撃しました。そしてアレクさんは駆け出し、負傷した男の側で膝をつきました。ご覧の通り、地面はとても硬く、僕たちを犯人の元へ導くための足跡はありません」

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