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翻訳家の卵がシャーロック・ホームズを翻訳してみた『ライゲートでの難問』その2

「旦那様、お聞きになりましたか!」使用人は息を切らした。「カニンガム邸ででございます! 旦那様!」
「強盗かね!」大佐はコーヒーカップを宙に浮かせたまま叫んだ。
「殺人でございます!」
意思とは関係ないように、大佐から自然と息が漏れた。「ああ、なんてことだ!」大佐は言った。「誰なのだ? それで誰が殺されたんだね? 治安判事かね、それとも判事の息子かね?」
「どちらでもございません、旦那様。御者のウイリアムでございます。胸を撃ち抜かれ、もうあの方が話されることありません、旦那様」

「それで、誰が彼を撃ったんだね?」
「強盗がです、旦那様。その強盗は弾丸のように忍び込み、そしてまんまと逃げおおせました。ウイリアム氏が強盗を見つけた時、強盗はちょうど食料貯蔵庫の窓から押し入ろうとしているところでございました。ウイリアム氏は主人の所有物を守り、そして自身の死に目に会ってしまわれました」
「それはいつのことだね?」
「昨日の夜のことでございます、旦那様。12時くらいのことだと伺っております」
「なんてことだ。それではこの後、私たちはカニンガム邸に向かう必要があるな」大佐は冷静に、再び朝食に集中しながら言った。「食事の味を損なう実に嫌な出来事だ」使用人が去った時、大佐はつけ加えた。「カニンガム氏はこの辺りの指揮者だ。そしてとても立派なやつでもある。彼はこのことにひどく心を痛めているだろう。というのは、殺されてしまった男ウイリアムは、長年カニンガム氏に貢献をしてきた使用人だったのだ。これだけは言える。確実に、アクトン氏の屋敷に侵入した同じならず者だ」
「同時に、とても奇妙な組み合わせの品々を盗んだ輩でもある」ホームズは考え込みながら言った。
「その通りだ」
「そう、これは世界で最も単純な事件かもしれない。一見すると全く同じに見える。だけど、この事件、ほんの少し好奇心がくすぐられる事件でもある、そう思いませんか? 田舎で行動する強盗団は、本来の活動の場は全く別の場所にあると予測されるかもしれません。それに数日の内に同じ地域で2軒の家に忍び込むとは思われないかもしれません。ですが、昨晩大佐がこの強盗の話をした時、恐らくこの地域がイギリス最後の行政区であるがゆえに、強盗が関心を向ける可能性が高いだろうと、その考えが僕の心を貫いたことを覚えています。これは、僕がまだ多くを知る必要があるという暗示です」

「地方専門の強盗団だという気がしているよ」大佐は言った。「アクトン氏とカニンガム氏はこの辺りで圧倒的な有力者だ。彼らの屋敷はまさに、その強盗団が行動するのに打ってつけの場所だろうな」
「それに金持ち?」
「ああ、恐らく彼らはその部類に入るだろう。だがね、アクトン氏とカニンガム氏は数年間、互いの血を流さざるを得なかった起訴問題を抱えている。そう私は思っているよ。アクトン氏は、カニンガム氏の資産の半分に相当するいくつかの権利を有しており、そして互いの弁護士たちは諸手をあげて未だやりあっているからね」
「地元の犯罪者なら、そのニ人を突き止めるのにあまり苦労しないというわけね」あくびをしながらホームズは言った。「わかってるよ、ワトソン。僕はこれ以上干渉しないつもりだよ」
「フォレスター警部が参られました、旦那様!」ドアを勢いよく開けながら使用人は言った。
直後、身なりがよく、鋭い顔つきの若い警部が部屋に入ってきた。「おはようございます、大佐」若い警部は言った。「邪魔をするつもりはありません。ですが、あのホームズ氏がここにいらっしゃると聞いています」
友の方へ、大佐は手を振って示した。
警部は私の友へ頭を下げた。「あなたの血は、恐らく騒いでいるだろうと我々は考えています、ホームズ殿」
「どうやら運命は、君に逆らおうとしているようだね、ワトソン」笑いながら、ホームズは言った。「君がこの部屋に入ってきた時、ちょうど僕たちはこの事件について話してたんだ、フォレスター警部。恐らく君は、事件の詳細を僕たちに伝えることが可能なはずだ」
ホームズはくだけた姿勢で飄々と椅子にもたれた。と同時に、こうなってしまってはどうすることもできないことを私は悟った。

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